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笹幸恵
2021.11.2 18:55日々の出来事

無知の煽りはたちが悪い「NEWSポストセブン」

NEWSポストセブンが、次のような記事を載せている。

眞子さん結婚で高まる女性宮家創設気運
実現なら”二重権威”への懸念も
https://news.yahoo.co.jp/articles/a3b0d4632ea9148eb6c98c8cf167bb13cfb99dde

ざっくり説明すると、こんな内容だ。

眞子さんが結婚して皇籍離脱されたことを踏まえ、
愛子さまや佳子さまが結婚されたら悠仁さまお一人になってしまうこと、
そのため女性宮家創設の気運が高まっていること、
しかし仮に愛子さまが女性宮家の当主になった場合、
天皇に即位される悠仁さまと、直系であり当主でもある愛子さまとで、
二重権威が生まれる・・・。
「眞子さんの結婚により、皇室の未来は重大な岐路に
立たされている」という締め。

一読して、皇室について全く知らない、考えたこともない
記者が書いたのではないかという感想を持った。
とくにタイトルにもなっている二重権威云々については
つっこみどころ満載だ。

①そもそも天皇家とその他の宮家とでは
お立場に大きな違いがある。
愛子さまが仮に宮家当主になったとしても、
それは変わらない。何がどうなって二重権威というのか。

②二重権威と騒がれたこと、つい最近もあった。
現在の上皇陛下が退位されたときだ。
自称保守派が退位に反対する理由の一つとしていた。
「とんでもないことになるぞ!」「二重権威で混乱するぞ!」と
騒いでいたけれど、実際はどうだった? 二重権威が生じたか?
たった数年前のことなんだから、覚えておきなよ。

③傍系の悠仁さまと、直系の愛子さまだから
二重権威が生じるという論調なのだけど、
だったらなぜ直系が天皇になるという選択肢を
取り上げない?
なぜか女性宮家創設の懸念だけを表明して、
女性・女系天皇には一切触れていないのだ。
無知なのか、それとも知っていてあえてスルーか。

だいたい、女性・女系天皇と女性宮家の創設はセットだ。
宮家なら女性は当主になってOK、
でも女性宮家の子は天皇にはなれませんというのでは、
そもそも皇位継承問題は解決しない。
男系男子のままなら、どうしたって悠仁さまの妃になる人が
絶対に男の子を産まなければならなくなる。
そんな理不尽、いつまで続けるつもりだ?

せめて高森先生の『「女性天皇」の成立』を読んでから
書いてほしいよ。

ついでに言う。
こういうことを書くと、必ず男系ゴリゴリ原理主義者が
悠仁さまを廃嫡するのか、不敬だ!などとトンチンカンな
いちゃもんをつけてくる。
しかし「人」の話をしているのではない。
「制度」の話をしているのだ。

ただし、「愛子さまや佳子さまが現行制度を前提とした
人生設計を描いている」という指摘は重要だ。
まして眞子さまがあれだけバッシングされたのだ。
皇室に残りたくない、結婚して皇籍離脱したいと
お考えになっているかもしれない。
「やっていただいている」という謙虚さを忘れた国民が
招いた種だ。
何十年もこれを放置した政治家、
女性・女系天皇の案を握りつぶした安倍晋三の罪だ。
どれだけの人がこれを自覚しているだろうか。
愛子さま、佳子さまが「皇室に残りたくない」と
おっしゃったのなら、反対する術を私は持たない。

そして最後の締め。
「眞子さんの結婚により、皇室の未来は重大な岐路に立たされている」

なんだそりゃ。
眞子さんの結婚よりはるか前に、重大な岐路に立たされているのを
この記者は知らないのか?
これすら眞子さんのせいだと言いたいわけ??
少しは勉強してから原稿を書け。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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